ある休みの日、朝起きると外は雨でした。
今日は部屋でバラバラになった仕事の資料と、たくさんある本の整理をしようと本棚の前に座り込み、とりあえず、いるものといらないもを分けた。
本棚から取り出しては仕分けして、ようやくその作業は終わろうとしていた。
その時。
なんだっけ?これ。
古い紙のカサカサ素材の表紙。
あっ!
なつかしい。
五年前に実家を出る時に、なぜかこれを持ってきたのを思い出した。
幼稚園の時の将来の夢を書いた文集。
いつも、駆け足で仕事をしてきてたから、立ち止まるのを恐れて周りと競争するかのように仕事をしてきたから、暖かいものがここにあるなんて忘れてしまってた。
でも、実家から出てくる時になんでこれだけは持ってきたんだろう。
そんな事も忘れてた。
仕事あるときは朝から晩まで忙しい。
正直、仕事している自分は好きで、好きな仕事をしているけど、同じ仕事を続けて、突っ走ってきて五年、どこか時代の波に心がさらわれそうになっていた。
本来の自分を見失っていた。
いや、なぜ、あの時これを実家から持ち出したんだろう。
理由を忘れていた。
理由がわからないまま一日が終わっていった。
次の朝、カーテンを開けると見事な快晴で太陽の光が部屋に差し込んでいた。
昨日の「理由」はまだわからなかった。
幼稚園の時の将来の夢
「歌手になりたい」
思い出すと、笑いが出て来た。
小さい頃から大きな夢を抱えていた。
夢を持つと何故かうれしい気持ちになれた。
なんで、これを実家から持ち出したのだろう。
理由は
わからない。
でもきっと仕事をして、自分を見失いそうな時にこれを見るために…
だったんだろう。
五年前にこれを持ち出した自分にありがとう。
そして、これを書いた幼稚園の自分にありがとう。
今日は仕事だ。
私は初心に返っていつもより少し早めに部屋を出た。