アンタが好きだった。
やさしい目つきや、耳に心地いい低い声。
アンタが好きだった。
ケンカ好きで、いつも誰それをぶん殴ったとか、怖い話を自慢げにしてた。……瞳はやさしいままで。
アンタが好きだった。
初めて下の名前を呼び捨てで呼んでくれた時、私がどんなに嬉しかったか、知ってるかな?その時アンタの顔は見えなかったけど。
アンタが好きだった。
すごくすごく好きだったんだ。
…………どうして言えなかったんだろう。
恥なんて捨てて、あるがままを言えたらよかったのに、何で……。
アンタが好きだった。
――もう遅い。
そんなの、わかってる。
けど。
私は今でも、アンタが好きだ。