後悔。
している、と認めたところで逃れられない罪。
僕だけじゃなかった、と言ったところで…言い訳にしかならない。
僕は中学生の頃、取り返しのつかない罪を犯した…罪だとその時は気付きもしなかった。
僕は、自分より弱い誰かを作っただけだ。
たちの悪い奴らにとってどもり癖があり、分厚い眼鏡をかけていた僕は…恰好の餌食だった。
だから。だから僕は…。
親友を売った。
あいつの母親が水商売をしていること、父親がアル中で前科があることを奴らに売った。
奴らは、その事実よりも僕が「親友」とされていたあいつを売り飛ばした事実を面白がった。
次の日から、餌食になったのはあいつで…。
僕は「奴ら」に成り下がった。
これを読んでいる君だって、殴られるのは嫌だろう?
僕は正直だっただけだ。
あいつは殴る僕を見て、何も見ない目で見つめた
唯一、ボコボコにされた僕を庇ったあいつ。
夏休み、真夜中に小学校まで行きプールに入って笑いあったあいつ。
両親のこと、恥ずかしそうに打ち明け…微笑んだあいつ。
あいつの目が、僕を見る
そこに軽蔑が混じり…その後、怯えが混じるようになった。
そういう二年が過ぎて、僕は卒業して、忘れたフリしていた。
そして…あいつは死んだんだ。
中学の奴が丁寧に教えてくれた。
電車に飛び込んだって。遺書には
「迎えに行く」
誰を…?
もちろん、僕だ。
だってそれから、僕はあいつを見る。
電車に乗って、座っている…すると僕の読んでいる本にパタっと血が零れる。
僕は見上げない。
そこにあいつがいるからでも視線の先に、裸足の足が見える。
足は青白い。
見ているうちに、血が滴って…僕の足元に血溜まりが出来ていく。
高校に行く。
歩く先にあいつがいる。下駄箱に手を伸ばす僕をじっと見つめる。
家に帰る。
ベッドに座っているあいつがいる。
僕は決して、あいつと目は合わせない。
怖いから?
違うね。
あいつの目をみたら…。僕は。
僕は壊れてしまう。
あいつの血にまみれた手が、僕の肩を親しげに抱く。
友達だろう?
違うね。
僕は…。
僕は!
そして僕は遺書を書いている。
読んでいる君が、誰かが僕を赦してくれるかな。
僕は、あいつが来てくれたこと、嬉しいんだ。
迎え来てくれたのが、たとえ赦しでないとしたって、あいつに会いたかったんだ。
さあ
僕はあいつの目を
見る。