「好きな子、いるんだよねー」
見上げた顔は、いつもの怠け顔で。
でも、それにはあえて触れなかった。まさか、翔が恋愛対象として見てる女子が居るなんて…って驚いた。
「…ほんと?だから、泣いてたわけ?失恋したの?」
これが図星なら、私は凄いことを口走ってたと思う。
翔の髪がふわふわなびく。
風が止んだを合図のように口を開いた。
「そんなところ。」
それは、とても冷たい。感情の無い、声色で。
ただ、自分を見据える瞳だけが、なにか訴えていように感じる。
もしかして、怒ってんの?“失恋”て単語出したのがヤバかった?
や、それとも毎回一緒に居るから勘違いされて…?いやいや!つか、それはコイツのせいじゃん!!
必死に思考し、もう一度翔の顔をみる。
そしたら
「なぁーんてねっ!」
「…?」
にへらっ、と笑う翔の顔が霧消に殴りたくなる衝動を抑え、疑問符で訴えた。
「好きな子ね、いるよ〜でもフラれてませーん。学年一美人で有名なとなりのクラスの愛川さん♪あんまし俺のこと見てくれないものだから、悲しくってー…悠理〜v慰めて〜!」
と、次の瞬間翔の頭がガコンと音を立て揺れた。
殴られた。