想像の看守 ?―?

ユウ  2008-03-21投稿
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(不良……か?)
もういっそすがすがしいほどの金髪に、裕一はちょっと度肝を抜かれて彼女を見ていた。しかし、何か違和感がある。裕一は彼女が、優等生みたいな雰囲気をかもし出していることに気づいた。
スカートは膝より少し長めで、第一ボタンまできっちりと閉めた上でネクタイをしている。化粧っ気もまるでない。校則を破りたいのか破りたくないのか――とにかく奇妙な少女だった。
「……何か用?」
最初の驚きを抜けると、後は普段の裕一そのものだ。少女の方も何気ない様子で裕一の机にもたれかかった。
「ウウン、別に?君、あんまし学校来ないから、どんな人なのカナーって」
舌っ足らずに話すので、カタコトみたいに聞こえる。裕一は眉をひそめながらも冷静に返した。
「……あ、そう」
少女は冷めた返事もいっこうに気にせず、ニコニコと愛想がいい。美人ではないが、それなりに可愛いと言えるかもしれない。しかし、裕一の心は少しも動かされなかった。
「つれないナー。そんなんだと友達できないヨ?」
「るせ」
「アタシが友達になったげよっか??」
裕一は耳を疑って少女を見上げた。
「……は?」
「だーかーらァ、アタシが友達になったげる!あ、もしくは彼女でもイーヨ?」
少女はクスクスと笑った。だがその真意は見えない。裕一はただただ、不信感を募らせた目で少女を見ていた。
(……何なんだコイツ?)

「あ、自己紹介がまだだったネ〜。アタシは中本恵梨奈。ヨロシクね!」
「……」
「お前らー、席つけー。SHR始めるぞー」
担任教師の声に助けられた。「じゃあね」と小声で囁いて、恵梨奈は席に戻っていった。
裕一はまた、机に伏せた。
(……学校来ても、変な事ばっか)
もう日常に戻れないのかもしれない。半数ほどしか来ていない生徒に適当に話す教師の声を聞き流しながら、裕一は思った。そして気づいた。――そもそも、俺にとっての日常って何だった?そんなもの、ハナから存在していなかったんじゃないか……?
「河井!」
教師の張りのある声に、裕一は現実に引き戻された。
「はぁ」
「お前、後で職員室来い」
「……はぁ」
めんどくせぇ。
その一言を呑み込むのに全身の機能を使わなければならなかった。どうせ成績のことだろう。クス、と笑う声がして、何気なくそっちを見れば、恵梨奈が口元を手で覆っていた。



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