A.M.nesia?

Y.Y  2008-03-22投稿
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5.


……なんだ。
………何が起きた。
腰のあたりに激痛が走った。
「ぐあっ」
………どこだここは。
あたりを見渡すと、どうやらここはベッドの上のようだ。
頭も痛い。
「うっ」
頭を抑えると違和感を感じる。包帯がまかれているのだ。
ここは……病院か?
俺はなんで病院にいる。
俺は…。
俺は……。
俺は…誰なんだ?
名前は。
わからない。
住所は。
わからない。

ベッドを囲っている白いカーテンが開いた。


6.
アンリ・バルビュス


私の父は船乗り。
いつもなら一度航海にでたら数週間は帰ってこないのだが、今日は違った。
なんと1日もしない内に帰ってきたのだ。
ルアーヴルの港から連絡があり、10キロメートル離れてる家から急いで駆けつけたのだが、やはり様子がおかしい。
父は警察に囲まれて、何やら質問されているみたいだ。
父と同じ船に乗っているバーンおじさんが近寄ってきた。
「やあ、アンリ。久しぶりだね。」
「こんにちは、バーンおじさん。あの…」
私が声を出し切る前に、バーンおじさんは答えた。
「安心して、アンリ。君の父さんは何も悪い事をしてああやって取り調べを受けてるわけじゃないよ。」
「どうしたの。」
「……。人を、拾ったんだ。海でね。」
人を、拾った?
「人を拾ったって……生きてるの?」
「意識は戻さなかったけど、生きてるよ。ルアーヴルの病院にさっき搬送されたところさ。」
「そう…。」
向こうで父が手招きしているのが見えた。
「アンリ。今日は仕事は休みなのかい?」
「ええ。今日は休み。昨日言ったじゃないの。」
「そうだったかな。まぁいい、実はな父さん達…」
今度は私が父が声を出し切る前に言った。
「人を拾ったんでしょ?バーンおじさんに聞いた。ちゃんと一割貰えた?」
「はは、そうか。アンリ。今日が休みなら、たった今病院に搬送された男の病室に行ってくれないか?」
「別にいいけど、どうして?」
父は警察を見て、隠すように私に握り拳をさしだしてきた。
「忘れ物だよ。彼の。」
そう言うと父は、私に懐中時計を渡してきた。
「接着剤で固定されているのか、中は開かないが、年季が入ってる…。きっと大切なものだろう。届けてあげなさい。私たちは、また海に出てくる。」
そういうと父は振り返り警察に一礼すると、船へと向かった。
そして私は父の背中を見届けると、病院へ向かった。



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