うーん
「お前の場合な、この後」
ほら、こっちこっち。
母親の方へ近づいて行き、せり出した大きなお腹を指した。
「またあそこへ戻るのさ。」
おっちゃん
「あかんで。あれはオレのはなちゃんが入っとうとこや。」
そう
男はしゃがみ込んで肩に手を置いた。その手は父よりも大きくて温かい。
「ああ、そうだ。お前はこれから、はなとして生まれ変わるんだ。お腹にいるはな自身が決めた事さ。」
ほら
男は少し顔を近づけて、
「お母さんのお腹のすこーし下辺りをよく見てみなさい。」
言われた通り、目を凝らしてよく見てみた。
だんだん
だんだん
お腹の中が見えてきて、中の様子が見えてきた。
小さな手を小さく結んで、お行儀よくまるまっている。
目をつぶって寝ている様に見える。
「寝てるだろう?お前の魂を入れる為に、はなはお腹の中でずっと眠っているんだ。はなの魂が入ってないからさ。」
ほんじゃ
「はなちゃんの魂は?おっちゃんがどっかに持って行ってもたんちゃうやろな?」
必死に胸ぐらをつかんだ。
男はその手を優しく両手で包み、
「大丈夫。これははなが自分で選んだ道だ。はなが出来る時にな、この体はお前の魂をいれてやってくれってな。」
じゃぁ、はなちゃん
はなちゃんは?
もう涙が溢れてどうしようもなく、かなしい。
「だから、大丈夫。はなの魂は、また次に生まれてくる赤ん坊に入るから。」
へ?
「ようわからん。」
んー
男は顎に手を当て、
「え〜とな、わかりやすく言えば、はなは、お前に先に生まれてくれ、自分は後で生まれるからって言ったんだ。」
おっちゃんに?
「うん。」
はなちゃんが?
「うん。」
なんで?
「いや、それは話ちゃいけない約束だから。」
はなちゃんと?
「そう。」
そうか
しばらく考えて、少し母親に近づいた。
「なぁ、おっちゃん。お願いがあんねん。」