「そういえばさ…、なんで俺らが尾の力ってやつを身につけなきゃいけないんだ?」
「私、元に戻れるの?」
腰まで届きそうな長髪となった洋介と不自然な長さの牙を持った狐…もとい此葉が狐文に尋ねる。(ん?まだ言っておらなんだか?)
「…、じいさんが九尾狐ってのの息子で九本の尾を探しててってのは聞いた。 …で、それで俺らがこうなったのはなんでだ?」
(それは二つ理由があるの。此葉は朝起きたら戻ってるじゃろうから心配無用じゃ)
「ホントに?このまま戻らなかったら噛み付くよ?」
「そんなことは後でいいから…、理由は?」
「ちょっ!そんなことって…」
「いいからちょっとまて…」
そういって此葉の頭をなでる。
「うっ…、ごろにゃ〜ん。ゴロゴロ」
甘い声を出し始める此葉…。
「(猫かよ…)」
(おぬしらに渡した理由の一つ目に幻蔵が襲われ尾が無事ということはおぬし達が襲われる可能性が高いということ。二つ目におぬしたちに残りの尾を探してもらう手伝いをしてもらうためじゃ)
「ちょっと待て、俺らを襲ってくるのか?」
(ただ幻蔵を襲うだけでは意味はないからのう)
「尾を渡したら?」
(間違いなく不特定多数の人間が餌食になるじゃろうな。まずおぬし達の一族を滅ぼした後にの)
「自分達…、それと人類の為にってやつか…、ガラじゃないな」
(それでもやらねばならん。おぬしたちとて何も出来ずに死にたくはなかろう?)
「まぁ…な」
(そういうことじゃ。それにおぬしたちは一族じゃからの。遅かれ早かれ敵は来ていたじゃろう。夢の世界の崩壊は世界の終わりじゃが、夢を見るものがいなくなるのも同じじゃよ。)
「そうか…やるしかないみたいだな…。どうやって戦えばいい?」
(それはおぬし達の狐弦糸と狐響牙が導いてくれるじゃろう)
「わかった。それでいいか?此葉?」
振り向くと此葉はもう撫でていないのに今だゴロゴロと言いながら尻尾を振っていた…。
「はぁ…こいつには後で言っておくよ。」
(うむ。頼んだぞ)
苦笑いをしていた狐文が不意に真面目な表情になる。
(とりあえず当面の敵は”獏”じゃな。一つアドバイスをしておこう)
「ん?なんだ?」
(我らの力は夢、想いを糧とする。夢は大きく持て、でなければ…)
「…でなければ?」
(…夢と一緒におぬしらも喰われるぞ。)