少女は顔を上げて目の前にたたずむ建物と向かい合った。
「これが私が通う学校…」
数年前に建てられたというこの校舎はまだ新しい。
横に立つ若い女教師がなにやら言っている。この学校の講師だろうか。一つ一つの動作がぎこちない。
「この校舎は三階建てになっていて…えと…」
教師のぎこちない話し方とおどおどした態度に小さく笑ってしまった。
「ちょっと!聞いてます?…もういいです。歩きながら説明しましょう。じゃこっちから中に入ります。」
教師が歩いていく。
少女は振り返って校庭を眺めてみた。校庭では運動部が一生懸命練習している。そしてその奥には光輝く海が見えた。深呼吸すると心なしか潮の香りが漂ってくるようだ。
「早くしてください!」
教師が少女を急かす。
二人は職員の玄関から中へと足を踏み入れた。