――廃棄ナンバーが、今更何をするつもりだ――
――ガイアを守るには、これしかないんだ――
――ニール、行けっ!ここは俺がやる――
――貴様は……死ぬべき者だ――
…………俺は……カイン・スミシー……だ。
「……イン……カイ……」
声が聞こえる……。
聞き覚えのある声だ……。
暖かい……優しい、誰だ?
「カインっ、しっかりして」
ゆっくりと目を開けたカインの目に飛び込んできたのは、心配そうに自身を見つめるアキの顔だった。
一度大きく息を吸ったカインはそれを吐きながら、右の拳を小さく握りしめる。
(どうやら、体は動くな……)
「アキ……俺は……?」
未だ鈍い痛みを放ち出す頭を片手で押さえながら、なぜ自分がこの様な状態に至ったのか、その経緯をアキに尋ねるカイン。
カインの安否を確認したアキは、小さく溜め息を吐くと同時にカインに答える。
「覚えてないの?カイン、急に倒れちゃったんだよ……」
アキの言葉に、カインは額を片手で覆った。
なぜ……?グランと話していた時までは覚えてる。
だが、その後の記憶が全くない……。
もし、これが戦場の真っ只中だったなら……俺はもうこの世にはいない。
「おいおい、そんなんで大丈夫なのか、天下のヴェノムさんよー?」
その時、カインの耳に皮肉を含んだグランの声が届いた。
薄暗い倉庫の中に、寝かされていたカインは慎重にその体を起こすと、薄いグレーの戦闘服に袖をとおしているグランを睨み付けた。
「これぐらい問題ない……」
「本当かよ?こっちは高い金払って、てめぇを雇ってんだぞ」
疑い深くぶっきらぼうにそう答えるグランにカインは声を荒げる。
「黙れ、俺は報酬分の仕事はするっ!あんた達に助けてもらうつもりもない」
吠えるカインに、グランは自身が身を包んだ戦闘服と同じものを投げ付けた。
「早く着やがれ、作戦開始だ。実力は実戦で見せてもらうぜ、ヴェノム」
言葉と共に、グランは巨大な鎚を背中に担いだ。