僕とは幼馴染で、そして何でも言いあえるヤツだ、と思っていたのだ。
ある日、クラスメイトにあいつを紹介してくれ、と言われた。僕は言葉に詰まってしまった。クラスメイトとあいつがつきあう、と想像した。なぜか、僕の中に鋭い痛みが走る。
どうやら、僕はあいつのことが好きだったらしい。悔しいが、認めるしかなかった。
だけど、今の幼馴染の関係はとても居心地が良い。この関係は僕だけのものなのだ。
僕は、この関係が壊れることがとても怖い。あいつとの間に壁ができるのは嫌だった。
突然僕の顔を覗き込んで「聞いてるの?」という。僕はとっさに目をそらす。
「ねぇ、最近変だよ。こっち見なさいよ」
あいつは僕の顔をぐい、とつかんで自分の方に向けさせる。
僕は「そんなことないよ」言いながら、また目をそらしてしまった。
僕の心の中の恐怖は僕の体を縛り、思ってもみない行動をしてしまう。このままではダメだ。このままでは、僕の方から心に壁を作ってしまうだろう。
「ねぇ、聞いてよ!君のクラスの男の子に、『好き』って言われちゃったよ!」
「え?」
紹介してくれといっていたクラスメイトだった。
僕は何も言うことができなかった。
「ね、何かあったら、君に相談するから」
「ダメだよ……」僕は役に立てるようなことは言えそうもないと思ったのだ。
「なんで?」
「僕はそういうこと、良く分からないから」
僕は目をそらす。
「ウソだ」
「え?」
「君がウソをつくときは、必ず目をそらすから。今、君はウソをついてる」
「ウソじゃないよ」
「君と何年一緒にいると思ってるの」
僕は黙った。
「何を隠しているの」
「隠してなんか無いよ」僕はまっすぐに目を見つめながら言った。ウソを見抜かれないためだ。
彼女も僕をまっすぐ見抜く。
「わかった。それほど言いにくいことなのか」
「え?」
「それにこの頃君は様子が変だった」
「それは……」
「今度は私に、彼ができそう」
「……」
彼女が口を開きそうになる。
「ダメだ!」
彼女は口を閉じる。
「分かった。言うよ」
「よし」
「僕がこの頃変だったって言うのは、その通りだよ。それにお前に彼ができそうと聞いて焦ったし、悲しかった。だから相談には乗れないと言ったんだ」
彼女は普段と変わらない様子で聞いている。僕は少し腹が立ったので、話を打ち切りに出る。
「もう分かったろ?」
「大事なことが抜けているね。何故君は焦ったの?何で悲しいのさ」
彼女は僕を追い込んでくる。
悔しいが見抜かれているようだ。あきらめるしかないようだった。僕は深呼吸をして、言った。
「お前が好きだったからだよ」