キーンコーンカーンコーン・・・
SHR終了の鐘が校内全体に鳴り響く。
この鐘がなると、麻弥が決まって言うことがある。
「ハル、今日はどんな店に寄るのだ?」
寄り道が大好きで、遥が何処かに寄るとも言っていないにも関わらず聞いてくる。
この質問に対する遥の返答も決まっている。
「適当に寄りたいところ」
寄るところを知らさないでいると、麻弥が楽しそうな顔をする。
二人きりの時間は、非現実的な日常に巻き込まれている中、現実的な日常を楽しめる唯一の時間だ。そんな大切な時間を今は噛み締める。
「・・・やっぱり、今度は私から寄りたいところを指定していいか?」
「え?まぁ、構わないけど・・・」
「礼を言う!」
「ありがとうございましたー」
レジの女店員から紙袋を麻弥に手渡される。
遥は椅子に座って見守っていた。
「待たせた!」
ニコニコしながら遥に駆け寄り、隣に腰を降ろした。
甘い匂いが紙袋の中から漂い、二人の鼻を刺激する。
「・・・で、ここでよかったのね?」
「うむ!ずっと前から気になっていた。だが、ハルがここを通り過ぎてしまっていたのだ」
折ってある紙袋の口を開け、中から甘い匂いの元を取り出した。
「だって、クレープなんて珍しい物じゃないし・・・」