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『ただいま‥‥。』
あたしは玄関で靴を脱ぎながら、
母への言い訳を考えていたー。
ふと、視界に入る母の愛用のスニーカー。
お母さん‥帰ってる‥‥。
台所の方からー
プーンと美味しそうな匂いがするー。
『奈央‥?!帰ったの?!』
母は、あたしの足音に気付いたー。
『お母さん‥。ただいま。』
ぼそっと呟く様にあたしが言ったら、
母は凄く驚いた顔をしてたー。
『奈央、ど‥どうしたの?!その髪は?!』
“鳩が豆鉄砲を食った様な顔”
とはー
正しく、この時の母にピッタリ当てはまっていたと思うー。
『学校の先輩に染めてもらったの。』
“何か文句ある?!”と言わんばかりのふてくされた言い方をしたあたしー。
『そんな事聞きたいんじゃないわ。
どうして髪を染めようと思ったの?!
校則で髪を染める事は禁止されている筈でしょう?!』
そんなの知ってるわよー。
『奈央‥。あなた最近どうしたの?!
母さんに何も話してくれないじゃない。渋川先生の言っていた、あなたが学校内で一番の不良の男のコと付き合っていると言うのは、やっぱり本当なの?!』
ショックだったんだー
母は、聖人のコトー
何も知らないくせにー
ただの不良扱いするからー。
『本当だよ。あたしが聖人と付き合ってるのはね。
学校内で一番の不良かどうかは知らないけど。』
冷たく言葉をを返したー。
こんな言い方ー
するつもりは無かったのにー。
『そう‥。その男のコと付き合ってるのね?!
奈央は、そのコの事をどう思ってるの?!』
母はー
案外冷静だったー。
『好きに決まってるじゃん‥‥。』
当たり前のコト聞かないでよー。
『そう。でも、その男のコもあなたと同じ気持ちなのかしら?!』
あたしは、母が何を言いたいのか分からなくてー
『当たり前じゃん。何でそんなコト聞くのよ?!』
イライラしていたー。
『なら‥。何故あなたにわざわざ、校則違反になる様な事をさせるのかしらね?!その髪の色は、確実に校則違反になるでしょう?!』