ガンバレ、俺

ANNA  2008-03-23投稿
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その日のバイトが長く感じられたのは言う間でもなかった。ハァ〜...。疲れた。しかも俺、カッコ悪っ!!!重ーい足取でロッカーに向かった。タイムレコーダーの前で姉さんに遭遇した。「姉さん!さっきはありがとうございました!」「あぁ、コーヒーこぼしたこといいってことよ。」なんて寛大な人なんだぁ〜。「ちょっと考え事しててすいませんでした。」俺は深々と頭を下げた。「どしたの考え事なんて似合い。」はっきり言うねぇ...。「今、就活中なんですけど、別にやりたいこともなし、何をしたいのかも分からないし、その上周りはどんどん決まっちゃうし、気持ちばっかり焦っちゃって...。」ヤバイ、なんだか俺は泣きそうになった。そんな俺を察してか、姉さんは「座ろっか。」と休憩室に向かいながら、パイプ椅子を引いて座らせてくれた。「一歩はどこの大学なの?」「N大の社会学科です。」「特技は?」「ゲームです。一昨日は気付いたら朝になっていました。あと漫画が好きで、コミックレンタルはよく行ってます。」姉さんは深ーいため息をついた。「そうじゃなくて、なんの為に大学に行ってるの。学んだことを活かすとか、好きなことを職業にするとか考えないの?」「なーるほどね。でも、好きなことを職業にできるほどじゃないし、文系って理系と違ってモテナイんですよねぇ...。ていうか、前々から疑問だったんですけど、姉さんってここの社員なんですか?」「違うわよ。私はハケンなの。」「『ハケン』ってなんですか?」「今時『ハケン』知らないの?『ハケン』ていうのは、派遣会社に登録して、自分の探してる仕事の条件と、企業が探してる条件に合えば仕事を紹介してもらって働くの。」
「じゃあ今はここに派遣されてるんですか?」
「今はある会社を辞めたばかりで失業中なの。今朝、店長から電話もらって今は助っ人。でも、次の仕事が見つかるまでここで働かせてもらおうと思って。」
「そういう生活って不安じゃないですか?
よし、俺決めた!派遣会社で働いて、姉さんに仕事バンバン回します!」
「いいねぇ一歩くん、頼んだよ。」
なんか、嬉しい。
やりたいことが見つかったって嬉しい。
その上、姉さんに喜んでもらえたら、もっと嬉しい。
その日は駅からの帰り道、俺の心はなんだか暖かかった。
方向性が見えただけでも嬉しかった。
桜の蕾が膨らんでいるのが見えて、なんだか余計に嬉しくなった。



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