学校のなかは案外静かだった。少女のはくスリッパのパタパタという音が廊下中に響いた。
「じゃあ一階のほうから廻りますね」
教師がそう言ったときだった。
トランペットの綺麗な音色が遠くから聴こえてきた。
それは聞き入ってしまうほど綺麗な音だった。流れるようなメロディー。スラーのかかったなめらかな音色。
吹いてる人に会ってみたい。
それは瞬間に走った衝動だった。
「階段は何処ですか?」
気付いたときにはそう訊いていた。気付いたときには走り出していた。
とにかく上へ。
一瞬走ったあの衝動のために今は上へ。