「う〜…寒いな、撫子」
俺の問いかけに撫子は静かに答える。
「…別に」
今俺たちがいるのはポポ山。
法人の本部がある都市、アガサカのすぐ北にある山だ。
とりあえず、期限が明後日までなので急がないと。
「お〜い撫子ぉ。その[孔雀の涙]がある豪邸ってまだ?」
「まだ、あと二十七分三十五秒後に着くと思われる」
いささか正確すぎるが、撫子の情報が間違ったことは無いので信じることにする。
…果たしてその二十七分(何秒かは数えてない)後にその豪邸の前に着いた。
「うわ〜、でっかいな」
「それには同感。このような大きな家にする必要性が感じられない」
「…さ、仕事を始めますか。
対象の透過率を上昇、可視領域の拡大」
これが俺たちが使う「魔法」と言われるものだ。
この魔法は基本中の基本だ、計算で言えば足し算…いや、かけ算ってところだ。
本来魔法使いは自分にあったオリジナルの魔法を編み出して使うのだが…まあ俺はいろいろあってちょっと特殊なんだ。
俺はいつもは基本の魔法しか使わん。
決してオリジナルの魔法が無い訳じゃないぞ、そこ。
―さ、本格的に行きますか。