Mind Adventure 7

籬 規那  2008-03-24投稿
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水泡が動く音に混じって、甲高い金属を引っ掻くような音が響く。


『待って………』

後ろから、聞き慣れた【声】が追ってくるのがわかる。


止まるわけには、いかない。少しでも、遠くへ。
少しでも、あなたを、留めておく。


『待ちなさい……っ!』

頭に直接響くような声に、焦りが滲んだ。恐らく、少女に気付いたのだろう。

海の色が深さを増す。
どれほど深く潜ったのだろう。


人間のこの娘にどこまで耐えられるのだろう。

水を飲まないように、口と鼻を覆ってやってはいるが、それもどこまでもつだろう。




人間は、脆い。

心も、体も。

異端を退けて、臭い物に蓋をして――

自分の周りだけが助かって、あぁ、今日も無事だったって

きっと、そう思うんだ。



認めない。私達が何をしたというの。

私達に何が出来るというの……


そう認めない。そうすれば、護ることができる。そのためなら――――

決して厭わない。




『待って!待ちなさい!!』

呼び声はどんどん大きくなる。
だから私は、最後だと分かっていながら、応える。

私達の道は、離れすぎてしまった。




『お願い……帰って来てよ………』

『姉様………っ』
もう、あなたには届かない。



腕が掴まれる。

幼い頃から一緒に育ってきた、見慣れた義理の姉の顔。あなたと私が違うと気付いたのは、いつだったろう。


鮮やかだった空色の髪は、歳を追う毎に漆の色に近付いて。
ついには、私達と同じ姿を保つ為には、薬が必要になった。



そのあなたが、私を見て、やっぱり少しだけ迷った顔をする。

だけれど、それも一瞬。


悲しげに、淋しげに、瞳を固く閉じて首を振った。


もう光の加減で、昔の碧に見えたりするのも『懐かしむ必要さえない記憶』に変わる。




その為に

諦めるわけにはいかない。
私にもう迷う時間はない。



金髪の少女の細い首に、ゆっくりと爪を立てる。

『帰って来てくれないなら、この娘――』


お願い お願いだから



『殺すわ』


誰か、助けて



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