「撃たないで!」
銃をこちらに向けながら少女は騒いだ。
ハルの銃はというと遥か後方、コクピットの入口付近に転がっている。驚いた拍子に取りこぼしたか、あるいはもっと前から落としていたのか。
「撃たないでよぅ…!」
「撃たないから!」
フラフラ揺れる銃口の先に立たないように宥める。だが、「撃てないから。」とは言えなかった。かなり錯乱しており、危険な状況にある。
「おーい!ハル?どうした?今の悲鳴」
「うっ…」
今の悲鳴を聞いた野口が外から大声を張り上げる。
「バカ野口……!あん畜生。余計な事……何でもないよ!」
「何でもないって事ァねェだろォー!!」
「うるせェ!!ウスラトンカチ!」
「てめぇ、言わせておけば…俺様を捕まえてウスラトンカチだと!?タダじゃおかねー」
足音がして野口がノシノシと近寄ってくる。
「あわわ…」
「うぅ……」
「来るなよ野口!」
「うるせェ!」
大声とともに野口の巨躯が日の光を遮ってぬっと顔を出した。
瞬間、少女の身体がビクッと強ばり反射的に引き金が引かれるのをハルは見た。
銃声。
悲鳴。