逃げたかったんだ
気づいた時には群れていた
大きな団地で俺は育った
親父はいなかった
まわりの奴らにはなぜ男のおじさんがいるのかわからなかった
学校が終わっても俺だけ学校に残ってかあちゃんが迎えに来るのを待った
さびしい
俺だけ仲間はずれにされているようで悲しかった
学校の授業はわからない
なんでわからないのかさえわからない
なにがわからないのかさえわからない
俺だけ怒られる
笑われる
はずかしい
とにかくこの場から逃げたかった
逃げられなかった
でもね
仲間が出来たんだ
たくま
幼稚園が同じでおなじ団地に住んでいる
たくまはいつも家の前で泣いていた
顔を腫らした母親と一緒に買い物をしていた
幼稚園の時に長いこと来なかった
入院していたらしい
いまだにあちこちに青い跡があり
時たま学校に来なくなる
いつも一緒にいた
たくまの母親が迎えに来るまで
学校ではよく泣かされていたがたくまがいると怖くなかった
そんな状況も長くは続かなかった