サカグチが亡くなって一週間。
誰もいなくなった部屋。
時間などいらない。
暦もいらない。
ただ日が昇っては沈んでその日が終わる。
私にとって、あの人のいないこの世界はあまりにも切ない。
今日も静かに時は流れるだけの一日。
アンドロイド。
私はそう呼ばれている。
人のいうことを忠実に聞く人形。
否定はしない。
だけど人の心がある。
喜び、悲しみ、他者への愛情。
それが私にはある。
あの人が私に残した遺言。
私が壊れない限り、風化することはない。
この言葉を守ることが今の私の使命。
―――――そしてもう一つ。
「クレン、クレンはいるかい?」
私を呼ぶ声。
「なんですか?エジ」
私は声で人を的確に識別できる。
呼び主に答える。
「そろそろ痛み止めの薬が切れるんだよ、また取りに行ってはくれないかい?」
「はい」
音もなく立ち上がり、主人のにおいの残る部屋をあとにした。