綺麗な虹

ふく  2008-03-25投稿
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心に目隠しをして生きて来た私の手をあなたが解いてくれた

雨は嫌いだった
寂しい心をまた寂しくさせる
空が真っ暗で先が見えなくなる
心にも降り続けるような激しい雨音

突然の雨でコンビニまで走った
息切れをしながら濡れた髪に触れられた
『一本でいいよ』
二本の傘を取ったあなたの手を押さえて唇を噛み締めた
激しく降る雨を見ながらあなたが少し戸惑った顔をした
一本のビニール傘は二人にはあまりにも小さすぎるから距離を縮める
傘を握るあなたの腕を掴みたくてだけど勇気が出なくてただあなたの歩く速度に着いていくことがやっとだった
ジーパンの裾もコートもずぶ濡れになって体が冷たくなっていく
気付けば傘が私の方に傾いていてあなたの優しさを感じた
『濡れるから』と言って傘を押しやる私を見て少し呆れる顔で笑う

雨が少し好きになる
二人の距離を縮めてくれたから
何となく明るい未来が見えた気がしたから

水溜まりに靴を濡らしながらあなたに恋をする
私にも幸せがある
過去なんか捨てて歩いて行ける
雨がくれたあなたがくれた幸せ

駅に着いてあなたが『雨なんてうっとうしいな』って傘を閉じながら言った
二人の距離が離れる
次会えたらまた突然の雨ならいい
そう願いながら駅のベンチで肩を震わせた

別れ際あなたが私に傘を差し出した
『俺はいいよ』と言って傘もささずに走り出す
優しいから切なくて『ごめんね、一緒の傘に入りたくて』叫んだ言葉が雨の音に消える
聞こえたのか聞こえなかったのか
あなたが少し振り返って笑う

次の日あなたは風邪を引いたらしい
わがまま言ってしまってごめんなさい
だけど嬉しかった
あの傘は大切にするから
早く風邪治してまた私の所へ会いに来て
電話越しのあなたの鼻声が何だか愛おしい
自分のわがままを反省しながらもこうして思い出を増やして行けることが幸せで愛おしい

あなたが私の心に傘をさしてくれた
もう濡れることもない
心に降り続けた雨も止んで綺麗な虹になる

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