11月も半ばの日曜日。もうすっかり秋で、早朝の空気は冷たかった。
いつも通り学校に集合して、何台かの車に乗り合わせて試合会場に向かう。
左側に広がる海を横目に見ながら、海岸線をひた走る。もう少しして朝陽が昇ってきたら、最高に綺麗だろうな…なんて思いながら。
ちょうど1年前も、同じように試合会場に向かっていた。ワクワクしながら、久々の試合に、9人でやれる試合に、胸を躍らせて…。結局…1試合しか出来なくて、打ちのめされて、悔しくて…そして、そこから始まった…ぼくらの小さな快進撃。
そして、1年後の今日…僕らは、どんな試合をするんだろう…。
1試合目
春先の大会の準決勝戦で、逆転負けを期したチームだ。序盤はリードされて、嫌なムードだ。去年の悪夢もよみがえる。それを、打ち消したのは四番のホームランだった。ここぞという時、頼りになるのが彼だった。一つ上の兄も、四番バッターだった。あまり顔には出さないが…兄のようにと、兄のようなホームランを打てるようにと、プレッシャーと戦っていたに違いない。人が見ていないところでも、よくバットを振っていた。
その小さな体から、放たれるホームランは力強った。
2試合目
最近、僕らが負け知らずのチームだったけど、この日は、相手チームも昇り調子で、苦戦を強いられた。それでも、なんとか小業を使い得点を重ねて勝利。
準決勝
この日…1番の試合だったかも知れない。どちらのチームのピッチャーも出来はよかった。打たれても、好守備でピッチャーを盛り上げた。終始、僕らチームの方が押し気味だったが…結局、0−0で引き分けた。大会ルールにのって、抽選で決めることになった。ここまできて抽選なんて…9人が、〇×が書いてあるクジを引く。〇が多い方が、勝ち上がる。5−4…やったぁ。僕らの勝ちだ。運も力の内と思い、気持ちを入れ直して、決勝戦だ。
決勝戦
初戦から、楽に勝てた試合はなかった気がする。それでも、気が付けば決勝戦。前回、一度リベンジを果たしたチームとだ。もう一度勝って、揺るぎないものにしたかった。しかし、相変わらず苦しい展開だ。それでも終盤、八番セカンドの好走で1点を入れ、DPのホームランで追加点。2−1で勝利。……2度目の
優勝だ。昨年の屈辱を果たしての優勝だ。僕たちの再出発は、こうして実を結んだんだ。