「リボンが料理長なわけだからウェイターは当然俺らだよ」
リボンの料理の上手さに惹かれ、レストランを開いたらどうだとサル坊の勝手な妄想が広がっていた。
「っるさいなぁ!いいから布団敷いたげなって!TK疲れてんだよ!!」
褒められると顔が真っ赤になるので、赤いリボンの様だと二人が付けたあだ名。
いや、理由は何でも良かった。三人にとって名前が無いのが何より苦痛だったのだから。
「へいへい、TK様こちらへ〜」
「アホ」
とは言いつつもTKはありがたかった。
実際に疲れていたからだ。
時刻は朝の5時。
二人はTKが帰ってくるまで待っていたのだ。
それが当たり前になっていた。先に寝られた方の淋しさが二人には分かるからだ。
「TK…寝た?」
「ああ、結構疲れてんだな」
「なんでそういう言い方しか出来ないかな〜」
皿洗いが終わったリボンはそのまま風呂へ向かった。
しばらくすると風呂場からきれいな歌声が聴こえてきた。
歌詞は聞き取れない。
メロディだけだが心地良い歌声。
リボンだ。
サル坊はこの時間がたまらなく愛おしかった。
頼れる仲間の寝顔を見ながら、頼れる仲間の歌声を聴き、ビールを呑む。
サル坊というニックネームの一人の人間は、この心地良い空間に恋をしていた。
この空間、時間を守るためなら何だって出来る。
そんな気すらした。
「また私の歌盗み聴き?一曲千円だよ」
「〜〜!わかったから下着姿で歩き回るなって!」
「いいんだよ?私はいつでも」
胸の谷間をワザと見せて、サル坊を誘惑したが彼に効果が無いことはリボンが一番よく分かっていた。
サル坊からそういう事をするはずがないことは、一番よく分かっていた。