aliment 003

 2008-03-26投稿
閲覧数[184] 良い投票[0] 悪い投票[0]

朝方から降り出した雨は、リボンの記憶に少し嫌な影を落とした。
TKを奥にして、リボンを真ん中、サル坊を入り口側に川の字になって寝ていたが、リボンがカラダをたまに震わせる様子をまどろみながらサル坊はただ黙って見ていた。





「沖川セリナくん」

「はい」

面接官に名前を呼ばれ、沖川セリナと呼ばれたリボンは面接官の前に立った。

「まぁウチは風俗と言っても、脱いだりはしないから。お客さんの前ではね」

そう言われ安堵したのも束の間、リボンは面接官たちに取り囲まれ、強姦された。

「まんまと引っかかりやがった!」
「久々に当たりですね!!」

リボンは強姦されながらも尚、叫び続けた。

「働かせてください…!上京資金を貯めるだけなんで…!お金を…!」

―歌手になりたかった

心で叫んだ声が、たまたま通りかかった二人に届いたらしい。豪雨の中、路地に打ち捨てられたリボンをサル坊とTKが肩を貸して歩かせてくれた。
この記憶までしか無い。

気づけばこの二人の料理長だった。
名前はリボン。
リボン。
照れると飾りのリボンみたいに真っ赤になるからリボン。
そう呼ばれるうちに本当の名前は忘れた。

「リボン…だいじょぶかよ?」
知らぬ間にTKの方を向いていた。
TKは泣きはらした顔のリボンを見て驚いていた。

「だいじょぶ。…………いいから寝ろ!」

駄々っ子のようにTKをぶつと、従うままTKは反対を向いて寝た。

この二人について来て何年、何ヶ月経過したのか…。
時間の感覚も、あの日以来止まったままだ。

「二人とも………私は此処にいていいの?」

「じゃなきゃ誰がメシ作ってくれんだよ」

「あんな上手いメシ、手放してたまるか」

リボンは泣き、笑った。

「私はメシそのものかよ!」

此処にいていいの?
まるで早押し問題に答えるみたいに二人は即答した。
これが三人の説明し難い絆だった。
堅く結ばれた絆だ。



投票

良い投票 悪い投票

感想投稿



感想


「 輪 」さんの小説

もっと見る

恋愛の新着小説

もっと見る

[PR]


▲ページトップ