野口が撃たれた。ゴロゴロと転がり落ちていく野口を助けるより、まずはこの女(声からそう判断される)兵士を確保する事が先決だった。
ヘルメットの下の顔は伺えないが、人を撃ってしまった事に相当ショックを受けている様だった。
「棄てろ!」
「来ないで!」
今度は銃口をハルに向けて女兵士は威嚇する。
「何もしない!」
「嘘!」
「嘘じゃ…!」
ガーン!と火薬が破裂する音と共にすぐ後ろの機器が火花を散らす。
死ぬ覚悟でハルは女兵士に向かって思い切り跳躍した。
ハルは体格のいいほうではないが、この華奢な女兵士よりは重い。
2発目の弾丸が轟音を立てで頬を擦る。
ハルは構わず女兵士にタックルした。
コクピットの座席に押し倒し、ハルは女兵士に馬乗りになる。
「きゃぁぁ!!」
何をされると思ったのか、さっきまでとは比べ物にならないくらいの悲鳴をあげ、バタバタさせた足が腰を打ったがハルは離さなかった。
「聞け!何もしない!捕虜っていっても…知ってるだろ?ベルリン条約。何もされ…」
ふと、ハルは彼女が話を聞かずにハルの目をじっと見ていることに気付いた。
『…ハル?』
確かに彼女はそう言った。