私立2T学園生徒総代表こと木原枝レイの様子は至って余裕しゃくしゃくだった。
クリスタルグラスに満たされた高級ワインを飲みながら、
『実は楽しみなんだよ』
『はあ?』
脳天気を極めた会長の言葉に、さすがのタクトも呆然となってしまった。
『タクトちゃんは楽しみじゃないのかい?』
『全然―楽しみじゃねえよ』
気を抜かれたままの目でタクトはレイを睨み付けた。
しかし、レイは相変わらずのんびりとぎんぎらぎんの椅子に座り、両手を頭の後ろに組みながら、
『だってさあ―退屈だし』
五指の全てに宝石輝く指輪をはめた左手で、まとわり付く女子生徒の髪を撫で―\r
『やることねえし』
沸き立つ女達の嬌声を愛でながら―\r
『所詮人間は―刺激を求める生き物じゃない?』
そして―七色に輝く己の髪を、勢い良くレイはかきあげた。
『テメェの退屈しのぎのために俺とかまで付き合うのかよ?』
そんな会長に、剣呑な眼差しをタクトは向けたが、
『だってそんなモンだろ?暴力もセックスも、偉大な理想とやらも』
レイには《持論》があるみたいだった。
『君だって殺しを楽しんでいる。そこに大した理由はない―だったら同じ暇潰しじゃないか』
するとタクトはいきなり拳銃を会長に向けて引き金を引きまくった!
カチッ カチカチカチカチッ
乾いた破裂音は轟かず―\r
『キ…キャァァァァッ―』
脅えて逃げ惑う女子達の叫び声が響くのみの会長室で、当然レイの頭も吹き飛ばなかった。
弾切れだ―\r
『確かに違いねえ―俺は殺しがしたくて仕方がねえ。そこに理由なんてあるもんか―ククッ』
薄気味悪くにやつきながら、タクトは拳銃を卓に放り投げた。
そして―\r
『そうさ仕方ねえよなあ?敢えて言えばDNAがそれを求めてるってか?だとしたら楽しむしかねえか?《戦争》ってヤツを』
理解し難い納得のし方を示しながら、今度はいつの間にか取り出したサバイバルナイフをタクトはしゃぶり始めた。
ヤバイ男だ―\r
『そうそう、欲望に逆らっちゃいけないよ』
それに全く動じない木原枝レイは、更にヤバイ男なのかも知れなかった。
『それにね―俺は会ってみたいんだ。梅城ケンヤ君に―今や東京中のイジメグループがその名を聞いて震え上がる《処刑生徒会長》にね―』