ここは魔物が住まう、崖淵斜陽館でございます。
本日のお客様は『未来』でございます。
窓の外を飛び回り、列を幾重にもしている車を見ながら。
男は、ふと我に帰る。
今は、講義中なのだ。
大学で歴史を教えて教壇に立ちながら。
帰りの心配をしてしまっていた。
「教授、質問なんですが」
学生が立ち上がった。「こんな、歴史の講義が本当に必要なんでしょうか」
2032年に世界戦争により、核爆弾により壊滅した地球。
生き残ったのは、月で試験的に生活をしていた、限られた数組の家族だけだった。
確かに、世界戦争以前の歴史は消えてしまったが。
ここ200年で月に巨大都市を建設するまでに成ったのだ。
かつて戦後にたくさんの子供を産んで、人工は爆発的に増えた。
しかし、戦争以前の歴史は、教授も解らない。
教授が心配している、帰りの、空中ハイウェイのラッシュ。
戦争以前も交通渋滞が有った事など、知るよしも無い。
歴史は、繰り返す。
如何で、ございましたでしょうか。
次の、お客様は貴方かもしれません。