その男は余りにも目立つ姿で、富良里の街外れの丘にある展望台にいた。
身の丈は二メートル程のがっちりとした体格に、髪型は赤いモヒカン。
鼻と耳にピアスをし、強面な顔立ちはパンク風の不良を想像させる。
服装は黒いコートを羽織り背中にはコートとは対称的な白い天使の翼。
これだけでも充分目立つが、更に目立つものを彼は腕に『寄生』していた。
彼の右腕にレンコン状の巨大な鉛色のリボルバーの弾倉が付いており、弾倉の中心から大砲の様な長い砲身が飛び出していた。
そして銃口には白い煙が立ち込めている。
どうやら何かを発射した後らしい。
男のリボルバーからカチッと言う音が鳴ると、リボルバーになっていた右腕は水飴の様にグニャグニャになり、普通の腕に戻った。
一瞬、突風が吹き、雪が舞い上がると、男の姿は既に無かった。
*
「到着はあと五時間後。
それまでにガンベルトが執行部の咲島ジュリアに『石』を埋め込み、対策本部を破壊。
そして電磁砲を発射して富良里の全ての連絡器具、コンピューターを使用不能にする。
ローズは遮断装置を破壊してくれ。」
「りょーかーい。」
悪魔の中年の男と、執行部の部長である狩屋源の間にあるテーブルには上の様に書かれた紙が置いてあった。
「これが暗号の解読結果や…」
「間違いは無いのか?」
狩屋は拳を握り締め、低い声を絞り出した。
「あの陣内が解読したんや。
間違える筈あらへん。」
「そして…今実際に起こっているしな…」
執行部の中でも諜報活動を専門とする諜報課が富良里で暗号を傍受したのは二時間前。
そしてつい先程魔獣が来襲したとの報告を最後に富良里の対策本部からの通信は途絶えた。
「四つの司令の内、もう三つは実行されている。」
「あと一つも…残念やが…」
二人の空間に殺伐とした沈黙が流れる。
「ガンベルト、ローズ、そして大量の魔獣と合成獣…
このままじゃ全滅するで?」
「あぁ…もう任務どころじゃない。
全部隊を撤退させるべきだが…連絡が取れない上にこの天候じゃ…輸送機も送れない。」
「八方塞がりや…」
人間は自然の前では無力。
そして時計の針は止まらない。
バッドエンドへと、一気に加速し始めた。