――分かるだろ――
声が聞こえる。
ウォールか?
いや、ウォールじゃない。
――お前なら出来るよな――
誰だ?
「カインさん?」
慌てて声の先に目を向けたカインの視線に、首を捻りながら自身を見つめるウォールの顔があった。
「どうかしたんですか?」
「いや……何でもない」
尋ねるウォールに、首を左右に振りながら答えると、駆逐系統の一つである『エンジン』に目をやった。
緩やかな曲線を持つ凹凸の物体……カインは、どこかで見たことがあると……そんな気がするのを感じた。
「少し、触らせてくれ」
言いながら台車に乗るウォールを押しのける様にカインは、その身をエンジンの真下に運んだ。
「ちょっ、駄目ですよカインさん!下手な事すると、一生使い物にならなくなり……」
――お前なら出来るだろ?ヴェノムだもんな――
頭に聞こえてくる声に耳を傾けながら、エンジンと別の機械を繋ぐ三本の導線の一つを手に取ると、それを隣にある四角いゴツゴツした硬い機械に繋ぎ、残る二本の導線をカインはエンジン自体に繋いだ。
瞬間、大地を揺るがす轟音が倉庫に響き渡った。
「ますよ……」
唸る轟音と共に小刻みに鼓動し始めた車体を下から見上げながら呆然とウォールは先刻の言葉を続けた。
「動いた……か?」
尋ねるカインにウォールは、車体と同じ様に体を震わせる。
「うっ、動いた。動きましたよっ!」
急ぎ足で台車からおりたウォールははいずりながら車体の下からはい出ると、鼓動する車体を見上げた。
「すごいっ、やった……やったー、やりましたよカインさん、動いてますよ」
「ああ……」