子供水先案内人?

Joe  2008-03-30投稿
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うん

「何でも言ってごらん。一つだけなら叶えてあげよう。・・と言っても、生き返らせる事は出来ないが。」

あんな

「オレな、ママとパパに、おでこにチュウしてやりたいねん。前にな、オレが注射で泣いた時、ママがしてくれてん、そしたらな、元気になってん。」

そうか

と男は立ち上がり、天に向かって手を伸ばす。そこから七色の光が差し込み、周りを取り囲んだかと思うと、突然身体が光り始めた。
うわぁ

「おっちゃん、何これ?」
「心配ない。それでお母さん達に触れるから。」

ただ

「それが終わったら、お前はまたお母さんのお腹に戻るんだ。」

うん、わかった。

ゆっくり近づいた母の目からは、宝石の様に大粒の涙が何度も頬へと流れ落ち、腕にはしっかり亡骸を抱いている。
何度も何度も名前を呼び続ける声は、すでにかすれ、虚しく部屋に響く。

「ママ、パパ、もう泣かんでええよ。」

ひょい
と背伸びをして、母親の前髪を少しまくり、

もう大丈夫やで

そう囁いて優しくキスした。

父親にも。

両親は、何かが額に触れたのを感じて

はっ
と顔を上げた。
『!!!』

ねぇ

「あなた、今・・。」
「あ、ああ、確かに、」
「康・・君?」
「きっとそうだ。あの子だよ。」
「・・‐泣かないで‐そう、言ってる気がする。」
「俺達が泣いてたのをきっとどこかで見てるんだよ。」

そうみたいね。

母親は、腕の中にいる我が子ではなく、すぐ傍の窓際に目をやった。

そこに、我が子がいる。

そんな気がした―。

「ありがとう、康君。」

なぁおっちゃん。

「ママ、オレの事見えとーのかな?」

いや

「でも、わかるんだよ。」

ふーん。

「・・さぁ、時間だよ。」
男はしゃがみ込んで、そっと肩に手を置いた。

なぁ、おっちゃん。

うん?

ありがとう。

うん、今度は、‘今度こそ’は、長い人生を送りなさい。

おっちゃん、やっぱり、神様やな。

男は答えるかわりに、
ふわ
と笑った。

身体が光で満ち溢れ、大きな愛で包まれていくのがわかる。

そうして、再び彼は母親の胎内へと戻っていった。

それからすぐ、母親は2975gの元気な女の子を出産したという。



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