詩音が話はじめると、薫は目の色を変えて、身を乗りだした
「あ‥‥」
その時、教室に違うクラスの男の子が入ってきた。
背は少し低めで、髪は自然と茶色がかっている。そしてツンツンにたてらし、制服はだらだらと着こなしていた。
その男の子が、実は詩音が気になっていた人なのだ。
「おいさとし!ちょい数学の教科書貸してくれン?」
はじめて近くで見た翔に、詩音は話すことも忘れていた。
初めて聞く声‥‥少しどきどきしている。
同じクラスのさとしは机から教科書をとりだしながら言った。
「はい。翔、おめ-今日ジュースおごれよ!」
「ほいほい。ありがと-ございますさとし様!!笑」
その男の子は教科書を受けとると教室を出て行った。
「翔ってゆ-ンだ‥」
心の中で思っていた事がつい口に出てしまったようで、薫はまたにやにやしながら詩音を見る 。
「へぇ-‥詩音の好きな人ってあの翔って人なンだ♪」
それを聞いた詩音は、やっと自分が声に出していた事に気付き、恥ずかしくなった。
「うわ!恥ずかし-(>_<)絶対秘密で!!」
「だいじょ-ぶだいじょ-ぶ♪」
相変わらずにやにやした顔で詩音の顔をのぞき込む薫に、ど-にか話題を変えようとした 。
「も-!!!それより、薫はどうなンよ?」
薫は入学した時から化粧はバリバリで、少しいかつい感じだ。
きっと彼氏がいるンだろ-なと思って、ワクワクしながら返事を待っていると、なかなか返事がないのでふと薫の顔を除きこんだ
薫は意外にも、顔を赤くしたまま下を向いていた。
「薫、どしたン?もしかして、このクラスに好きな人いるとかア??」
そンな薫をもてはやすように、詩音は薫を軽く叩きながら言った。
「うン‥‥うち、さとしが気になっとるンよ!!かっこよくない?」
少し恥ずかしそうな薫。
さとしは、さっき翔に教科書を貸した人で、翔と同じサッカー部で、クラスの中でもとくに大人な雰囲気を出している。 背も高い。
「え-!!!そうなン!!なンか意外!」
━キーンコーンカーンコーン━
その時、始まりのチャイムがなったので、お互いいろいろ聞きたかったけれど、詩音と薫は仕方なく席についた。