彼の恋人

高橋晶子  2008-03-30投稿
閲覧数[126] 良い投票[0] 悪い投票[0]

「大東亜帝国でないって事は、日東駒専クラス?」
「ううん。そんなもんじゃないわよ。推薦で明治学院に進むのよ」
「成成獨國武クラスじゃないか? 藩校のプライドとしては日東駒専に受かったと言える雰囲気じゃないから、よく腐らず藩校を意識して頑張ったもんだよ。後は夢に一歩一歩近付くだけだな」
玄関から物音が聞こえる。克彦が買い物から帰宅したのだ。
「ただいま……ん? みく、誰かお客さん入ってるのかい?」
自分のスニーカーで克彦に怪しまれた博文は身体を硬直させる。口はガチガチに震える。みくは、いそいそと克彦を迎える。
「お帰りなさい、お父さん。今、博文君が押し掛けて来て、大学の話をしていただけ」
みくの言い分もそっちのけで克彦は台所へ行ってしまった。荷物を流し台に置いて、克彦は博文の姿に気付く。
「やぁ、博文君。みくを振ったんじゃなかったのかい?」
電子ピアノを指差して漸く身体の硬直が解けた。
「ピアノの音につられたのか? ハハハ、僕も教師を辞めてからピアノを弾いているけど、やっとクラシックに挑戦した所さ。ところで、博文君。君の弟は何処を受けるんだい?」
博文は三人兄弟の真ん中で、兄とは10歳、弟とは3歳違う。弟は兄と同じ高校を狙うと思いきや……
「俺と同じ高校は嫌だって、青海一本で受けますよ。桜庭は誰も行きたがりませんし」
やはりあの事件が受験生を敬遠させているのかと、一同は確信した。閉鎖的な校風の上に、卒業生が引き起こした事件がマイナスに動いたのか……?

急ぎ足で帰って出願書類を作成しなければならない事を思い出し、博文はみくの家を後にする。
博文の部屋には、当初の志望校ではない国際基督教大学の入学願書が机に置かれていた。

i-mobile
i-mobile

投票

良い投票 悪い投票

感想投稿



感想


「 高橋晶子 」さんの小説

もっと見る

恋愛の新着小説

もっと見る

[PR]
KARAも虜になる!
紅酢をお試しあれ


▲ページトップ