派遣交換社員

BgwP←/nW0Ha  2008-03-31投稿
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「アタシが悪いって言うの!?」

 墨色の山々に囲まれたこの場所で。

「アタシの何が悪いって言うのよ!?」

 ヒステリックに、芝居がかった口調で叫ぶあたし。

「アナタにアタシの何が判るっていうのよっ!!」

 誰に言ってるわけでもなく、かといってストレスを発散しているわけじゃない。

 これは練習。
 あたしが[アタシ]になる為の、予行練習。

 あたしはまだ[アタシ]じゃない。
 この予行練習を終えなければ、あたしは[アタシ]になれない。

「なによっ!!この――――」

 ――――あ。
 [アナタ]に何を言うのか、忘れてしまったわ。
 失敗。
 これでは[アタシ]にはなれない。

 でも、あたしは今日中に[アタシ]にならなくちゃ。

 あたしはポケットから指令を取り出した。

 今回あたしがなるのは、37歳 カウンセラーの[アタシ]。
 そりゃカウンセラーなんてやっているんだから、ヒステリックになるのは当たり前よね。

 おおっといけない。

 もう少しで時間になってしまうわ。
 仕上げをしなくちゃ。

 あたしは、あたしに戻りかけた[アタシ]を治しにかかった。


もうすぐ日が昇る。
 あたしが[アタシ]になり、[アタシ]があたしになるまで、
あと、もう少し。

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