「くそっ!」
あのあと狐文と洋介で一通り探してみたが此葉の姿は見つからなかった。
(すまぬ。儂が近くにおるべきじゃった)
「…狐文のせいじゃねえよ。なんか感じねぇのか?」
(先程から探ってはおるが…)
「ちっ…地道に聞く事も出来やしねぇのに…どうすりゃいい…」
「ん?誰かいてへんの?」
イマイチ状況が掴めない狐弦糸に此葉のことを伝える。
「なんや狐響牙のチビらが一緒におるんか。なら心配せんでもあっちから連絡くるで」
あっけらかんと答える狐弦糸。
「なんで言いきれるんだよ!?」
あまりの軽さに苛立ちを感じてしまう洋介だったが…
「それがあいつらの能力やからな〜、普通の人間に渡してもよく切れる刃物くらいにしか使えてへんのちゃう?」
そういいながら狐文を見る。
(…とは言っても血族に渡るのは初めてなので…儂も刃物としか聞かされておりませぬ。)
「能力ってなんだよ!?早くさがさねえと…」
「なんやあんたもしらへんの?何学んでんのや最近の若いもんは。」
(まだ200年しか生きておらんので…)
「なんやそんな若いん?そらあかんなぁ…口伝方法考えたがええんちゃうか…とりあえず結界といて人が多い場所に行くでそっちの方が届き易いやろ」
そういって狐弦糸はイタチのような姿に化けると洋介の懐に滑りこむのだった。
「…で、狐響牙の能力って?」
駅前にやってくるとまだ部活の時間帯か学生服はあまり見られないがそれなりの賑わいをみせている。
「ん?うちと接吻したら教えるで?」
肩に乗ってニヤケているイタチが一匹…時折子供や女の子が
「かわいい〜」
と言いながら歓喜の目で見ながら通っていく…。
洋介は今すぐにでもこの場を立ち去りたい気分だ。
「笑えない冗談はいいから…方法は?」
「おもろくないなぁ」
「(面白くなくていい…)…で?」
「ただ待つだけや」
「待つだけ?」
「そうや。チビらの能力は音や。まあ使い方次第でよく切れる刃物になれば音自体に力を付けることも出来るねん」
「…それで?」
「チビらの片割れが調査とかが得意でな、ここらで待ってれば向こうから寄ってくる。ほら…」
そういうと目の前には知らない男性がいる。
「えっと…何か?」
洋介が尋ねると男性の口から小さな狐のような生き物が出てきた。
「さ、いこか〜」