「あの男大丈夫なのか?」
狐響牙に操られている?男についていく。
「大丈夫やろ。見たとこ待ち合わせって訳でもないやろし…、時間貰うだけやから」
「身体がだよ」
「特になんもあらへんで。音やから水につくのが楽やからその人についてるだけや」
「ふーん…。」
よくわからなかったが相槌をうっておく。
(洋介…こちらの方向はもしかして…)
「学校だろうな」
(ということはご学友に獏は取り憑いてるのか。)
「ちっと気になる奴はいるけどまだ確証は持てねぇし」
(気になる奴とは…?)
「そりゃおいおいな…学校につくぞ」
校門に着くと先導していた男は我に戻った。
「あ…あれ…?ここどこだ?…はっ、今何時だ!?うぎゃ〜商談時間過ぎてる!クビになるー!」
慌てて見知らぬ男の走っていく後ろ姿を見て洋介はものすごく申し訳ない気持ちになった…。
再び校門を見ると狐響牙が消えて行く…。
(な…っ、狐響牙が…)
「多分こっから音を出したんやろな…、せやからこっから先は地道に捜すしかないちゅーこった。めんどくさいなぁ」
(では中に入って探さねば…)
「ちょっとまった…」
「なんや?急がなあかんのやろ?」
「ちょっと気になる事があるんだ…来てくれ」
そう言って来た道を引き返し始める。
(洋介!急がねば此葉が…)
「いいから二人とも、こっちだ」
そのまま洋介達は立ち去って行った…。
離れた場所から校門を見ている洋介。
よいのか?こんなとこで見続けて。早よう行かねば此葉が危ないのではないのか?)
「いや…さらったのが学校の奴ってんならおおよそ予想は付いてる。」
(なに!?どいつじゃ?)
「とりあえず落ち着け。」
「それはいいんやけど…違ったら最悪な事態になるかもしれへんで?」
校門を見続ける洋介だったが…
「あ〜洋介さーん!」
不意に背後から声をかけてきたのは確か…
「えっと…文ちゃんだっけ?」
「嬉しい!覚えていてくれたんだ!」
そういって洋介の腕に抱き着いてくる。
「えっ…、いや、離してくれる…かな」
そんなやり取りのうちに目的の人が校門をくぐって行く。
「来たっ!ごめん文ちゃん!俺行かないと…」
そう言って離れようとする洋介の腕を力強く抱きしめる。
「行カセマセンヨ〜。」
そう言う文の瞳は黒く濁っていた。