手は赤く染まっている。
私の村には、古から鬼が現れる。鬼といってもお伽話に出てくるような鬼ではなく、外見は私達と同じく‘人間’である。と言うよりも鬼は元々人間だった。全て人間に鬼になる可能性がある。普通の人間に分かるように言うならば、鬼とは犯罪や殺人などの罪を犯した人間であり、人間の心そのものである。
私の一族は代々鬼を排除してきた。私も十歳の頃からこの仕事をしている。
初めは、同じ人の姿の鬼を排除するのに躊躇いを感じていたが、今はもう慣れて息をするのと同じように排除できるようになった。
ある日、村人の一人が鬼へと変貌し人を殺した。殺されたのは、私の母だった。変わり果てた母を見て父は人とは思えぬ奇声を上げその村人を排除した。しかし、父はその後も周りにいた村人を手に掛けた始める。父は鬼になったのだ。鬼になった父を止めようと何人もの一族が父に向かっていったが、誰一人として父を止める事ができなかった。
私は、変貌した父に近付いてその首を手にした刀で切り捨てる。
大丈夫、いつもやっていることだから。
その後、私は都会に出て鬼を排除し続けている。
ふと鏡を見ると、そこには鬼が写っていた。