五月某日
天気快晴
体調良好
空のその青さを意味深と呼ぶにはあまりにも充分過ぎた
まるで新品の絵の具のような
希望に満ちた青
世の不条理も何もかも塗り潰せるような青
そうそんな青の中に僕はいた
だけど僕は
不条理と戦うような勇気もないあまりにその青には不釣り合いな人間だった
父は無職
働く気はない
学校から帰ってきた僕に背中でおかえりと言うことだけが仕事
母はパート勤務
僕には無関心
三食冷凍食品を出し、僕という存在を頭ごなしに否定するのが仕事
学校、社会、対人関係
青の中…
そう僕は今空に行こうとしている
死んで星になるなんて話昔から信じてなんかいないけれど
こんなんよりかマシだ!
五階建てビルの屋上だ
ヒーローでもない限り助からない
遺書は書いた
三回も書き直した
文才はない割にうまく書けた
少し足が震える
…痛そうだな
飛び降りはやっぱやめようかな-…
いやここまできたんだ
覚悟を決めろ…
さらば、我が15年間!!
「少年いい天気だなぁ」
僕の足は急ブレーキをかけたせいで顔面から派手にこけた
まるでコントのように
始まりは何時だって突然で
何時だってそこに扉があるんだ
それを開けるも開けないも君次第
ゲームのオープニングの台詞だ
僕はこの時どうやら扉を開けてしまったらしい
いや開いてしまったのかな
ともかくこいつとの出会いが後々の僕の運命を大きく変えてしまうということをまだこの時の僕は知らない
僕はただ
限りない青の中で自らの鼻から出続ける赤をどうやったら止められるか
それだけ考えていたんだ