「あ、涼お嬢様、お帰りなさいませーっ!」
城崎涼に導かれて着いたのは、武家屋敷のように厳しい(いかめしい)門構えの広壮な屋敷であった。
涼と同じ様な道着を着た屈強の男たちに一斉に頭を下げられ、木村猛は少々気後れしてしまう。
「お、おい…… 何だよこのドでかい家は。 お嬢様って?……」
「気にしない気にしない。家ばかり大きくても住んでる人間はどうって事ないからね♪」
そう軽く言ってのけた涼は 『ここが道場だよ』
と言うと大きな木製の扉をギギーッと開けて、猛を目で促した。
「ここが我が一門の総本山って訳。 まぁ、治外法権みたいなものだから、怪我人が出て騒ぐような腰抜けはいないよ」
「一門って…… 門外不出の秘伝の技ってやつ?」
「まぁ、そんなとこね」
そんな会話の後、神棚にむかって三礼三拝した二人は、多くの門弟たちに囲まれながら道場の中央に向き合って正座した。
(おいおい……マジで俺と戦う気かよ。 女の子いたぶる趣味はないぞ?…)
「言っとくけど女だからって手加減は無用だからね?うふふっ♪どうせ当たりっこないんだからさァ」
これには流石の猛もカチンときた。
「その生意気な口を黙らせてやるよ」
城崎涼の、猫の様なアーモンド型の大きな目をキッと見据えた木村猛は、満身に燃え盛る炎の様な闘志をみなぎらせていった。