第二話「響く声」
無の世界。ここには、何もない世界だと思っていた。僕以外は――。
そう思っていたところに現れた声。しかし、その声の主の姿を見つけることができない。
その声は、直接僕の中に語りかけているからか。
というより、聞く、見るという動作が、この状況に通用するのかも怪しい。
「だ――誰ですか?」
僕はおそるおそる聞いた。口で言葉を発するというより、ただ心で思うようにして言った。
声は、しばらくの沈黙のあとに返ってきた。その声は、僕の中でこだまするように鳴り響いた。
「誰かって? もちろん、私とあなたは初対面ですよ」
淡々と語りかけてくる声。その声は、僕を少し馬鹿にするように聞こえた。
相手の表情が分からないために、本当にそうかは分からないけれど――。
「あの、ちょっと質問してもいいですか?」
僕は、その声に控えめに聞いた。
「――いいですよ」
落ち着いた声で告げられる、了承の返答。
僕は、この不思議な空間に抱いていた疑問をついにぶつけた。
「ここは一体、どこなんですか?」
僕は静かに、答えを待った。声が返ってくるまでの時間が、やけに長く感じる。そして――。
「ここは――」
つづく。