Crystal

結城慶幸  2008-04-05投稿
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 大国ノクロムの夜は長い。
 小高い丘の、黒い空に舞う真っ白な雪は、青年の顔に、はた、はた、と落ちて水滴へと変わる。
空を見上げる青年のその眼は淡い朱。
ふわっと風に揺れる髪は雪と溶け合う白銀。 コートの襟を立て直し、今一度、黒い天を仰ぐ。そこには、いくつもの星が輝き、青年を包む。
・・・ふと、名前を呼ばれた気がして後方を振り返る。
大国ノクロムの夜が続く。
少年の名前はIzuno。ここ、ノクロムの古語で、龍という意味をもつ。名付けてくれた両親は、もういない。Izunoの唯一の肉親は、3歳離れた兄ひとり。その兄も、一緒には暮らしてない。両親が戦死したあと、10歳だったIzunoは近所の鍛冶屋の家に引き取られ、兄はノクロムの城で働く科学者に引き取られた。兄はとても優秀で、ノクロム内の学校でも有名だったためだ。しかしIzunoが14歳になると、鍛冶屋の男は病で急死した。Izunoは仕方なく、幼少時代から仲の悪い兄のいる科学者の家に行くことになった。 しかしその頃、国は近いうちに隣国、ビスチニアスとその近くの国のサバルドとの間に戦争が起きると聞き、ビスチニアス側の防衛に付くため、若い少年兵を集めていた。ノクロムとビスチニアスは、昔から友好関係にあり、過去一度、戦争をしたきりであるという。
一方、サバルド帝国はというと、強力な兵器を持っているというわけではないが、なにしろ人が多い。乾燥した大地に、黒い肌の人々は、ビスチニアスの湿原の一部を求め、軍人も、そうではない人も、その黒い手にそれぞれの武器を持ち、戦争を起こそうとしているのだ。
ビスチニアスという国は、暖かい気候と、豊富な水資源で、とても華やかな国である。

どこの国も王制で、一切の権力は王にあった。

「Izuno!出遅れるな。俺が合図したら、一気に駆け降りて、サバルド軍の後ろを突け。わかったな?」
「はい!」
好きではない17歳の兄の命令で、Izunoは14歳にして、戦場に降り立った。
それからは、兄の命令通り軍の隙を突いた見事な戦法により、ビスチニアス防衛戦は成功した。そして、戦場での彼らの活躍は、王にも認められ、Izunoはノクロム城の警備兵として働くことになった。

続きます。



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