かつてこの世界には『セルフィア』と呼ばれる種族が存在した。
彼らは見た目は普通の人間と何ら変わりは無いが、彼らが信仰する世界を創り、全ての命の源と言われている存在『ソース』と契約し、不思議な能力を操る事が出来た。
その力は魔法と呼ばれた。
しかし彼らの世は長くは続かない。
数が増えすぎて、同族同士の殺し合いに魔法を使う様になったセルフィアを『ソース』は嘆き、自らの手でその数を減らす事にした。
空からは隕石が雨の様に降り、地上は炎に包まれた。
まるで地獄の様に。
そして生き残ったのは少数の魔力の薄いセルフィア。
彼らは再び『ソース』が怒り狂うのを恐れ、魔法を使うのを止めた。
そして彼らが我々現世人類の祖先である。
これがこの世界各地に伝わる神話。
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聖歴3020年
2月2日
午後8時27分
イスパニア共和国 首都 マードル
首都中心部のビル群は星の見えない暗闇の空にそびえ立ち、決して眠らない光の街。
そして中心部から離れた中世ヨーロッパの街並みが未だに残る住宅街は優しい明かりが窓から零れ、家族の団欒を感じさせる。
イスパニアの首都マードルは古来より王都として栄えた為、王政から共和制へと以降した今でも貴族達の館が残り、一部は歴史保護区にもなっている。
そんな風光明媚な街に一台の黒いバンが停車した。