「あ…… 痛ゥ…」
「あら良かった、意識が戻ったみたいね」
「……ここは?」
俯せに寝かされていた木村猛は、誰かの優しい手が患部の辺りを冷やしてくれていたのに気付き、目覚めていた。
「……そうだ!まだ勝負は終わっちゃいない!!」
ガバッと跳ね起きた猛は、直後に猛烈なめまいを覚え再びへたり込んでしまう。
「いやぁ、どうもお手数かけました。 ……それにしても、本当にそっくりですよね。
凛さんの事、涼と間違えてド突く所でしたよ」
「アハハ、よく言うよこの男は。 どつける位なら伸びたりしませんよーだ」
「涼ちゃん、言い過ぎよ?誰だってあんな攻め方されたら面食らうわよ。
ウフフッ…飛び付いてキスでもしかねない勢いだったじゃない?」
双子の姉、凛さんが笑顔で妹をたしなめる。
彼女の言う通り、突然目の前数センチの至近距離に美女の顔が迫れば、男なら誰だって動けやしない。
まさに『奇襲』、それも実に猛の弱点を突いた……
「でもさァ、初めて攻撃食らっちゃったぁ。 狙いがかなりHだけどね♪」
「いや、あれは無意識に」
「て事は触りたかったんでしょ? ヘンタイ君」
「ぐ…………」
涼の胸元のペンダントをむしり取っていた猛には、反論するすべもなかった。
「でもね?」
涼が続ける。
「あの、勝負に対する執念は気に入っちゃったぁ♪」
その言葉の後、涼は猛に顔を寄せて、頬にチュッとキスをしていた。
(おおーっ!……ゆ、夢なら覚めないでくれ〜っ!)
女性たちと無縁な青春を送り続けていた猛。
彼は、つい先程まで敵呼ばわりしていた涼に、再びノックアウトされていた。
幸せな意味で……
終わり… だけどまた続編があるかも。(作者)