『馬鹿だな。無理しやがって‥‥。
こんな事したら、渋川に直ぐ呼び出されんぞ!!』
聖人の目は、とても優しかった―。
いつもは、鋭い切れ長の奥二重の目がー
一瞬にして優しい目になる、この瞬間がー
あたしは大好きだったー。
『う‥ん。うん。だって、聖人に少しでも釣り合う女の子になりたかったんだも‥‥ん。』
じわっ―――。
泣かないつもりだったのに‥‥‥。
『俺達、お似合いのカップルじゃねぇの?!』
聖人は、そう言って笑った―。
その目は少し、照れていた様な―。
『う‥ん。そ‥うだよね。』
あたしも思わず泣き笑い―。
『聖人、今日学校何で早く来たの?!』
『ん?!ああ‥‥。何となく‥‥な。』
“何となく―”か‥‥‥。
それでもあたしは嬉しかった―。
聖人が、あたしのコト、思ってくれてるんだって―\r
そう思わせてくれる様な―\r
今のこのシチュエーション―。
『奈央。今日は、このまま帰るぞ。』
『えっ?!何で?!』
聖人ってば、いきなり何言い出すの?!
『バッカ!!その髪で学校内彷徨いてみろ!!渋川だけじゃなく、学年主任の山村にまで、目付けられるだろ?!』
そう言われてみれば、そうだけど―\r
『俺が黒く染め直してやる。今から俺ん家行くぞ。』
はぁぁ〜〜〜っっ?!
マジですかぁ〜〜〜っっ?!
何か凄く強引じゃない‥‥‥?!
あたしは、聖人と付き合って一カ月を過ぎて―\r
初めて聖人の家へ行く事になってしまったんだ―。
聖人と付き合っていると毎日がとても新鮮で刺激的だった―。
勿論、この時点では、まだまだ聖人について知らない事は沢山あったんだけれど‥‥ね―。