やっと懲罰房から出してもらったハルだったが、気持ちは晴れなかった。
一足前、基地の兵士と艦長が入ってきて、アキを連れていってしまったからだ。
捕虜なのだから当たり前の事だ。
でも心配だった。
仲間達が「よかったな」や、「敵の捕虜だぞ。ほっとけよ」と口々に言ったがハルには殆ど聞こえていなかった。
「・・・アキ」
「緊張する必要はないわ。基地の収容所に入るだけ。あおかぜの中と変わらないから……」
基地内の廊下を歩きながら滝川は必死にアキ(と名乗る)少女を励まそうとした。
「変わらなくないです。ハルがいない‥‥」
さすがに緊張している。というか、怯えている。が正しい。
人懐っこい少女で、自分に対しても「こんにちは」とにっこり笑う姿はとても敵と思えないが、彼女があの“天使”のパイロットだったと考えると身震いがした。
「じゃ、ここでね」
分かれ道で、出来るだけ笑って滝川は言った。が、
「いいえ。彼女も一緒に会議室へ」
突然後ろの兵士が割って入ってきた。
「土田准将は捕虜との謁見も所望しておいでです」
どういうこと?
隣の荒木副艦長を見ても、首を傾げるだけだった。