アナタの事なんて忘れていた。
忘れたかった。
アナタと歩いたあの場所には近づかなかったの。
思い出刻み過ぎたから。
もう3年、本当に忘れた時に運命は意地悪だ。
………アナタの匂いがした。
雑踏のど真ん中で。
決して間違えない。
あんなに愛しかったから。
アナタの香水とタバコとちょっぴり汗の混じった匂い。
思い出と一緒に切なくて苦しい恋心が甦る。
立ち止まりそうになる自分を引きずり、息を止めて歩いた。
胸が苦しい………。
アナタを思っていた過去の私が何度も引き留める。
やっとの思い出たどり着いた駅の前。
思い出に浸って昔の待ち合わせ場所をみたら
アナタがいる。
………はずはない。
自分の愚かさに涙が出た。
そんな私を慰めるように携帯が鳴った。
「アナタ」だった。