リミット THREE 12

ゆうこ  2008-04-08投稿
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「馬鹿…か…お前」


棒立ちになっていたリノを、翠が抱え込み…動きが鈍いながらも迫る影を断ち切るように扉を閉めた。

影の脇を擦り抜け、よろめいた翠は、力を使い果たしたかのように床へ倒れ込んだ。

「翠…」

リノはひざまづき、虚ろに見上げた翠を見下ろした。

翠の右腕は、ないも同然だった。
片目は開かれず、噛み付かれ頬は今もなお血を流し続ける。

「あのやろ…俺の腕食べやがって…腹…壊すよな…ざまあ…」

ペッと血痰を吐き出し、ニヤッと笑った。
いや笑ったつもりだったのだろう。

「翠…喋ったらダメ」

声が、遠くから聞こえてくるみたいだ。
リノは指の残っている翠の左手を握った。

「私が…ごめん、翠、私のせいね」

翠は答えず、咳こんだあと独り言のように話始めた。

「大橋リノさん…俺さ…君が好きだった」

「え…?」

翠は続ける。

「リノが教室にいるのに気付いて…告白するチャンスだと思って…俺、一年の時から…ずっと…」
翠の身体が震え出す。
たくさんの血液が流れ出したショックで氷のように冷たい。

「翠、わかったから、もういいから」

翠は掠れた声で話す。
使命とでもいうように、決然と。

「二年になったら…告白…勇気でなくて…俺、リノの笑顔が…」

翠は言葉を止め、にぎりしめたリノの指を微かに握り返した。

そして微笑んだ。



「泣くなよ、会長…」




そして、翠は黙った。


翠の片目は見開いたまま光を失った。




翠の呼吸は止まり、リノは一人になった。




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