途切れた記憶

迷子の手紙  2008-04-09投稿
閲覧数[130] 良い投票[0] 悪い投票[0]



忙しく駅に向かう私。
何時からか時間に追われる社会人になった。


すれ違う学生服がとても遠く感じる。
ほんの少し前、私だって着てた。
なのにもう遠く昔話のように感じる。

思いだそうとしてもあやふや。


あの時私どうしてたんだろう。

電車に揺られて細い記憶を辿り始めた。


春雨が降る入学式。憧れていた高校の制服に腕を通した。

新しいことを始めたくて運動音痴の私がテニス部に入った。

…………違う。
私が忘れてるのは、もっと大切な思い出。

それから…………
それから…………


そう……。
それからアナタと出会ったのね。
そうか。
忘れてたんじゃない。
忘れようとしてたんだ。

自己防衛ってやつだ。

思い出した途端に流れ出てくる。

走馬灯のようにアナタが私の頭の中を駆け巡る。

休み時間に交わしたルーズリーフの手紙

帰りに待ち合わせた自販機の前

一日中手を繋いで歩いたデート

お互いの名前を入れたメールアドレス

喧嘩したクリスマスの夜


いくらでも出てくる。


あれ……
なのにアナタの言った一言だけは思い出せない。


私の記憶が途切れてる。


あの日からプツンッと…………




何か歯痒い。
思い出したいけど、
思い出したら私が壊れてしまいそうで。


そう。自己防衛……。


もう二度と傷付かないように。


優しい過去の私は思い出に蓋をした。



まだそれを開ける勇気はない。

開けてしまったら消えてしまう気がする。


アナタと通った同じ電車の中で、私はアナタをきっと永遠に忘れない。


ずっと思い出せない思い出を抱いて。

i-mobile
i-mobile

投票

良い投票 悪い投票

感想投稿



感想


「 迷子の手紙 」さんの小説

もっと見る

恋愛の新着小説

もっと見る

[PR]
〇beauty hand〇
海外セレブに人気


▲ページトップ