『く‥そ‥‥。何で僕だけ‥‥。』
悔しさが喉の奥から込み上げて来て、目頭に向かって突き抜けた。
―ちょっと‥あの人泣いてるよ?!―\r
―マジ?!失恋でもしたんじゃないのォ?!―\r
―嫌だ、キモ〜イ!!―\r
―行こ、行こっっ!!アハハハハッ―\r
僕の直ぐ横を、3人組のイマドキの女子高生が通り過ぎて行った。
こんなの、もう慣れっこだった―\r
人を笑わせる事が、ひとつの才能なのだとすれば、人から笑われる事もそれに当てはまるのだろうか。
人から笑われる事には慣れていた僕に、人を笑わせる才能は、あるのか―\r
某プロダクション主催の、お笑い芸人発掘オーディション―\r
この前、雑誌で見たんだ。
もし僕が、あのオーディションに合格したなら―\r
もし僕が、売れっ子のお笑い芸人になれたなら―\r
今まで僕を馬鹿にして来た奴らを見返す事だって出来るんだ。
こんな夢見心地な、現実離れした空想に耽ながら―\r
僕は家路を急いだ。
そして、半信半疑に思ったんだ。
帰ったら、あのオーディション主催者のプロダクションに、写真付き履歴書を送ってやろうって。
けれど、そう思っている事自体、帰宅し直ぐに風呂に入り、食事をしたら、すっかり忘れているに違いない―\r
僕は案外、それ程深く考え込むタイプじゃないのかもしれない。