そうだ。
イジメなんか無くなりはしない。
梅城ケンヤは本気でそれを撲滅しようなんて考えているのか?
クレイジーだ。
狂人の誇大妄想だよ。
そんな妄想に付き合う分けには行かないね。
増して命までかけるなんて―\r
太田カツヒロは焦燥と共に歩き回りながらひたすら考え込んだが、それはただ赤絨毯をわずか3mmずらす以外全くの空回りそのものだった。
だが―\r
『会長』
その一部始終を見届けていたエウフセラ=ナールマンがやおら声をかけてきた。
『なんだっ!?今考え中なんだから余計な声をかけるな!!』
会長の剥き出しの不機嫌にも、副会長は大した関心は持ってないみたいだった。
関心は持ってはいなかったが彼なりに会長とこの学校の行く末には興味があるみたいだった。
『お悩みなのですか?解決をお望みですか?』
低い冷徹極まる声だ。
『ああ、そうだ。どうにかして逃れなきゃ―どんな手を使ってでも―で、それがどうした!?』
力無きまくしたてを高い背中に受けながら、副会長はドアを開け隣室へと消えた。
太田カツヒロがいぶかる暇すら与えずに、エウフセラ=ナールマンは戻って来てドアを閉めた。
両手に金属製のケースをきらめかせて―\r
『これを』
感情無き進めに従って、太田カツヒロは恐る恐るそれを開けた。
そこには―\r
黒い小型のハンドドリルみたいな器具と、携帯の電池みたいな平べったいパーツがはめ込まれる様に収納されていた。
開いた蓋の側には英文の説明書らしき冊子が用意されている。
太田カツヒロはまずその冊子を読んでみたが―見る見るそれを持つ手が震え出した!
『これは―これは、熱線銃じゃないか!!』
そうだ。
副会長が手渡したのはマイクロウェーブ収束銃―\r
それを人体に放てばその部位が即座に高熱を発して破裂してしまう凶悪極まる兵器なのだ。
怯え切った表情で、太田カツヒロは歯をカチカチカチカチと鳴らし始めた。
『これで―これで俺に死ねと言うのか!?』
『いいえ』
指二本で多機能ゴーグルのずれを直しながら、エウフセラ=ナールマンは即座に否定した。
だが―\r
『殺すのです』
副会長はゴーグルを怪しく光らせながら、更に不吉な言葉で訂正した。