とても女性のものとは思えない力で洋介の腕を締め付けてくる。
「くっ…!」
その時肩に乗っていた狐弦糸が文の頭を軽く尾の先で触れると文は声も上げぬまま膝から崩れ落ちた。
「おっ?おい!?」
「大丈夫。気を失っただけや。」
「そうなのか?」
洋介は端の塀にもたれるように文を座らせる。
(操られているようじゃな。)
「ちっ…、とりあえずさっき校内に入って行った奴を追うぞ」
そういって洋介達は校門を駆けていった。
……………。
程なくして目的の男を発見する。
「おい!あんた!」
「ひぃっ!」
慌てて走り出す男だったが小柄で太った見た目のまま足は速くなくすぐに追い付く。
「待て!逃げるな!」
そういうと洋介は男の肩を掴む。
「な…なんですか?ぼ…僕は何も…し…知らないです!」
「誰やこいつ?」
「あんた、校門で反対車線から俺たちを見てたよな?」
「し…知りません!」
「別にあんたをどうこうするつもりはない。…あんた陸上の部長が何ものか知ってるだろ?」
「え?部長?」
「あぁ。部長の命令で俺らを監視してなかったか?」
「部長さんなんて知りませんよ。僕はあなたたちを知らないし」
洋介は男の両肩を掴む。
「あなた達?」
「だってあなたと後の女の子なんて見たことないし…」
「そうか…だがあんた何か知ってんだろ?狐文は普通の奴には見えない」
(む…確かに姿が見えるようにはしてないな…)
「それが見えるってことはあんたは獏と繋がりがあるのかなんかの能力なのかのどっちかなんだよ」
男は視線を泳がせながら
「どうして…」
と聞いてきた。
「あんたは気付いてなかったみたいだけどな。見かけた時もそうだったけど俺らを見てるとき目が赤く光ってんだよ」
「えっ?目が?」
「あぁ。間違いなくあんたには何かしらあるってことさ。とりあえずあんたは敵じゃないみたいだな」
そういって手を離すと洋介は再び考える。
「すまない。俺のアテは外れてたみたいだ…何とかして場所を特定しないて…」
「えっと…何があったんですか?学校のみんなおかしいみたいだし…」
(おぬしはその力故かかかっておらぬようじゃが今此葉が掠われてな…)
「えっ?遠野さんが?少し待って下さい。僕が探します!」
そういって赤い目を見開いた。